トップ > 最新情報 > 大気圧プラズマ処理により植物のゲノム編集に成功:沖野晃俊准教授
最新情報
品種改良の新しいツールとして期待
東京工業大学は、農研機構および千葉大学と共同で、大気圧プラズマの短時間照射により、ゲノム編集に必要な酵素を植物細胞に導入する新しい技術を開発しました。これまでの一般的なゲノム編集技術では外来DNAの導入が必要でしたが、本技術では外来DNAの除去が不要となるため、より簡便でかつさまざまな植物に活用できると考えられ、品種改良の新しいツールとなることが期待されます。
東京工業大学 科学技術創成研究院 未来産業技術研究所の沖野晃俊准教授、農研機構 作物ゲノム編集研究領域 光原一朗グループ長、千葉大学 大学院園芸学研究院 柳川由紀特任研究員らの研究グループは、約25℃に低温制御した大気圧プラズマを照射することで、植物細胞にゲノム編集酵素(Cas9タンパク質とsgRNAの複合体)を導入し、植物をゲノム編集する技術を開発しました。
従来、植物のゲノム編集では、一時的に遺伝子組換え技術を用いて、酵素の遺伝子をDNAの形で導入していました。この技術ではゲノム編集を行なった後、導入したゲノム編集酵素遺伝子は不要となるため、自家受粉や交配などにより次世代の植物を取得するなどの方法で、外来DNAを取り除く必要がありました。
今回開発した技術は、2017年に農研機構と東京工業大学で開発した、大気圧プラズマの照射により植物体に生体高分子を導入する技術を応用し、植物細胞にゲノム編集酵素(タンパク質-RNA複合体型)を導入したものです。この技術では、ゲノム編集酵素は遺伝子(DNA)の形で導入されず、タンパク質やRNAの形で植物細胞に直接導入されるため、これまでの一般的なゲノム編集技術で必要だった外来遺伝子の除去が不要となります。また、パーティクルガン(粒子銃)法やエレクトロポレーション(電気穿孔)法といった技術に比べ、植物体の形を保ったままプラズマ照射した植物組織の細胞集団に広く酵素を導入できる利点があり、植物のゲノムをより効率的に改変することが可能となります。
本技術は、ライフサイクルの長い樹木や栄養繁殖の作物など、これまでゲノム編集が困難だった植物における品種開発の新しいツールとして活用されることが期待されます。
イネカルスへのプラズマ照射によるゲノム編集酵素導入及びゲノム編集検出法
沖野晃俊研究室(電子機能システム研究コア)
https://ap.first.iir.titech.ac.jp/